突然くじ引きをさせられ突然召喚され参加することになった創造主主催の『雪合戦?』。
 ルールは単純明確相手チームの守る旗を奪えば勝ち。雪球には三回当たったらアウト。
 負けたチームは全員メイドさんの格好して正月中お給仕をすること。
 ふざけるなと叫びたい。

 

 

 

雪合戦夜独視点

 

 

 

 

 俺たちの創造主は毎回毎回くだらないことを考え付くがまさか正月早々にこんな企画を企てるとは思わなかった。 黒のすこしダブついた長ズボンに黒いセーターを着てその上からやはり黒いロングコートを羽織った夜独はこれまた黒のブーツで雪原を踏む。
 創造主・柳乃朋美が舞台として選んだのは見渡す限りが分厚い雪で覆われた平原で、ところどころにある雪の塊――――おそらく、岩か何かに雪が積もったんだろう―――が、いまのところ唯一の障害物となっている。
 確かにここならば多少…いや、かなりの騒動が起こったところで世界になんら影響は無いだろう。つまり逆を返せば問題が起こることを前提で選んだ場所、ということになる。そのことにすぐさま気づいて夜独は顔を顰めさせた。

 

「まったく…何を考えているんだあのトンチキ女神は…」

「そんなこと言ってると、タライでも落とされるぞ?」

 

 思わず口に出た独り言に苦笑交じりの返事が返ってきて、声の方を見れば鮮やかな藍の髪が凍えるような風に靡いていた。
 楽羅。動きにくくは無いのだろうか今日はいつもの派手な着物に袴姿で腰には彼の愛刀:爪天奇襲が下げられている。
 彼の言葉に、夜独はふんと馬鹿にしたような息を吐いた。

 

「文句も言いたくなるさ、こんなことに付き合わされるんじゃぁな。」

「雪合戦は嫌いなのか?」

「…別に、嫌いじゃあない。だが命をかけてまでやりたいと思うほど好きでもない」

 

 確かに、と、その返事に楽羅は笑う。この騒動を笑うだけで許容できてしまえる楽羅は究極のお人よしかよほど危機感が無いか己の力に自信があるかのどれかで、たぶん一番濃いのは『お人よし』の部分なのだろうと夜独は溜息を吐いた。まぁそれが楽羅の楽羅たる所以であることは『天支』に属する誰もがすでに理解していることなのだが。

 

「そんじゃ、チーム分けできたから発表するよ〜」

 

 スピーカーを通しているせいか、どこか人工的な響きのある間の抜けた声が鼓膜を震わせ、二人を含む全員がはた迷惑な創造主・柳乃朋美へ眼差しを向ける。その視線を受けて、朋美はにやにやと悪戯な笑みを隠そうともせず手元にある紙を手に取った。

 

「まずは赤組〜。ルーン、カーラ、翠、響、夜独〜」

「なっ!?」

 

 破壊魔王二人と天然大魔王一人の名前の後に自分の名前を呼ばれ、思わず強張った声が出た。横で楽羅が「って言うことは、俺たちは敵みたいだなぁ」とかのんきに言っているが聞こえない。
 待て。ちょっと待て。

 

「何で俺があんな人外魔境共と同じチームなんだ!?」

「え〜私に言われてもこれアミダクジで決めたし〜」

「ふざけるな!!やり直せ俺が心労で死ぬ!!」

「敵に回すよりましじゃん」

「仲間になった方が被害がでかいわっ!!」

「え〜そっかなぁ…」

 

 とか言いつつ創造主目が泳いでいる。まぁ、夜独って突っ込み属性だし何だかんだで仕切り屋だから気苦労で倒れそうではあるかなとは思うけど。と内心で呟くが夜独には聞こえない。夜独だって特に聞きたくも無いだろう。

 

「でもまぁ、これは公平に決められた結果だし。夜独一人の我侭で変更するわけには」

「それぐらいは解っている。それでも文句ぐらいは言わせろ。あぁ、くそっ、よりにもよって…」

「肩の力抜きなよ夜独兄ちゃん。ほらどーせこれゲームなんだし。」

「響。お前は本当にそれで良いのか!?まともなのは俺とお前ぐらいしかいないんだぞ!?」

「ちょっと〜?それどーゆー意味なわけ〜?」

「そーよそーよ。私のどこがまともじゃないって言うの?」

「この二人に関しては弁明の余地も無いが俺も同列に扱われるのは心外だ。」

「天然大王が何を言ってる」

「秤エは天然大王などではない!!」

 

 ギャーギャーと喚き立てる赤組の面々。その隙に朋美は一度手を叩き、彼らの額に紅色が鮮やかな鉢巻を出現させて満足げにうなずいた。うん似合ってる。
 それに気づいた夜独は「げっ」と顔を顰めさせたが結局舌打ち一つで諦めた。もともとこちらに拒否権などという便利なものは存在しないのだ。となれば後は許容するほかは無い。納得はできないが。…楽羅の人の良さが羨ましく感じる瞬間である。

 

「で、残りの半数の楽羅、月留、瑠華、ダード、茜が白組ね。それじゃーそれぞれ陣地について〜」

 

 言いながらも創造主が二度手を打ち鳴らせば、彼等彼女等の額に純白の鉢巻が出現し、100mほどの間をあけた両サイドに赤と白の旗が立ち風に靡く。
それを見て、まったく便利な能力だと夜独は呆れ半分関心半分で呟いた。

 

「そんじゃ、『雪合戦?』開始!!」

 

 

 

 創造主のさも楽しげな声が雪原に響き渡り―――――――
かくして、壮絶な『雪合戦?』は始まった。

 

 

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