いっぱい雪積もって、全部銀色で綺麗で、わぁ〜って思っとったら雪合戦すんねんて。
 ええなぁ、楽しいなぁ…♪

 

 

 

雪合戦茜視点

 

 

 

「それじゃあ、頼んだぞ、茜。」

 

 楽羅に言われて、私はうなずく。
 私の役割はカーラにひっついてカーラが力使われへんようにすることやねん。
 私だけ皆みたいに強ないから、カーラは力使われへんねん。強い人は力使ても死なへんからカーラも力使えるねんけど、そうやないと死んでまうから使われへんねん。
 そやから私が適任なんやて。
 楽羅も月留も、皆優しいから説明せぇへんけど、私は頷いた。

 

 

 

 それは、私が足手まといやから役に立つ言うこと。

 

 

 

 ホンマ言うと、ちょっと…ちょみぃっとだけな、胸が痛かったんやけど。
 それでも、役に立てるんは嬉しいから。
 せやから、気合入れてがんばんで!!

 

 

『さて、実況は私、寿桜花と』

『…』

『…えぇと、朱禍がお送りします;』

『私もいるよん☆ 明城桃華ちゃんでっす♪ ねぇねぇ!華の三人組よねこれって!!』

『…煩い』

『あははは;』

 

 

 楽しそうやなぁ…♪
 あぁ、あかん。気合入れなっ

 

 

『おおっとぉ!?ここで両チーム動き出したぁあ!!ルーンが詠唱を開始し、カーラが風を具現化し始めます!』

 

 

 桃華の実況に、楽羅が楽しそうに笑う。

 

「行って来い、茜。」

 

 優しく。けど強く。
 背中を押して、言うてくれる。
 足手まといな私に、役割を与えてくれたその声で

 

 

「任せた」

 

 

 共犯者に向けるみたいな、けどお母さんが子供を送り出すみたいな。
 そんな笑顔がすごく好きで、嬉しくて、

 

「うん!任されたでぇ」

 

 私は笑って駆け出した。
 一歩踏みしめるごとに少し沈む雪原で、
 吐き出す息も凍えて白くお化粧しとって、
 100M先で、カーラの赤くて綺麗な目が見開かれた。
 せっかく集めた風も顧みんと、カーラが一歩踏み出して叫ぶ。

 

「ばっ!!走ったらっ

 

 ほえ?

 

 

 

 

 

べしゃっ

 

 

 

 

 

『おーっと、茜選手走り出したと思ったら転びました!5Mも進んでおりません!

「あぅっ」

「っっあんた歩いてもコケるんだから走ったら確実に転ぶってこと解ってんでしょいい加減学習すれば!?バカはバカなりにもーちょっと学習しなよねバッッカじゃないのッ!!?」

 

 あうぅぅぅううう…また怒られてもぅた…;
 せや…走ったらコケんねんやった……失敗や。
 あかんなぁ、気合入れすぎてもぉたんかな?
 けどカーラも酷いで、バカ言うたらあかんよ。バカ言うたらバカになってまうねんで?

 

…に?なんでバカ言うたらバカなってまうんやろう。

 

 可笑しい、変やで。バカ言うたらバカになってまうん?バカって感染るのやろか。
 ほんなら、バカて病気なん?
 しかも感染する病気やなんて!!
 …バカ言うたときに、バカがバカ言うた人の所に飛んで言って入ってまうんやろか。
 いや、ちゃう、ちゃうで。バカてバカな事のことやから、入ったりせぇへんはずやで。

 

 そもそも、バカて何や?
 バカ…馬鹿………………うましか?
 なんで馬と鹿でバカなんやろ…?
 馬さんと鹿さんはバカいうことやろか?
 ちゃうで、馬さんも鹿さんもバカちゃうで!!そんなん言うたらあかんて!!

 

 

「〜〜〜〜っっんの、バカ!!さっさと顔上げろよ凍傷にでもなりたいわけ!?ちょっと楽羅も何放置してるのささっさと起こせよそれ!!って」

『おおっとぉ!?茜を残して白組全員いつの間にやら赤組の陣地へ距離を詰めている!!まさかそういう作戦かぁ!?』

『ルーンさんが慌てて詠唱を中断し、炎の矢(フレア・アロー)で牽制します!!ですがことごとく避けられる―――――っ!!』

「ちょ、あんたらあれ放っとく気なわけ!?」

「あはははは、まぁ、茜なら大丈夫だろ」

「茜だから大丈夫じゃないんでしょバッカじゃないの?! 頭の中身どっかに忘れてきたわけ!?」

 

 あー…あかん。ほっぺた冷たくてジンジンする…
 あうううう、けど上手く立たれへん、なんでぇ?

 

『おっと茜選手、セーターに雪がまとわり付いて起き上がれない模様!!』

『手足をバタつかせています!!ちょ、大変、あのままだと本当に凍傷起こすんじゃっ!!

「〜〜〜〜っっの、バカッ」

『あ、カーラ選手が見かねて走り出しました!その間に瑠華選手、瞬間移動でルーン選手の背後へ!!ああ!!ルーンさんに雪玉が当たりました!!』

 

 

 ほへぇ、もう雪球当てれたんや。すごいなぁ〜
 けど…い、息が…でけへん…;

 

『茜選手、雪から顔が上げられない!!このままだと窒息…っ』

『ちょ、まずいんじゃないですか!?茜っ!!』

 

 桜花の声が遠い。
 えぇっと…なんやったっけ、酸欠…やろか?
 こんなんやねんねぇ…
 くらくらして…意識が…………

 

 

 

 鉛みたいに重なった体が、
 何かに持ち上げられて息を吸い込む。

 

 あり?

 

「こ、ん、の、バカッ!!

「あ〜…かぁらや」

「セーターなんか着てくるからこーなるんだろ!?ってゆーかマフラーなんかする!?だから余計に首絞まってっ」

「ありがとぉなぁ」

 

 嬉しいなぁ、カーラが私のこと心配して怒ってくれてる。
 そんで、助けてくれてんね。
 ありがとうな。

 

 そう思たからそう言うたのに、カーラは顔真っ赤にして黙ってもぉた。
 そんな薄着やから、寒くて真っ赤っかやねんね。せやから長袖着ぃ言うたのに。あかん子やねぇ

 

「かーら、真っ赤よ、上着貸そか?」

「っっっ///〜っんの、のほほん天然っ!!こっんな処で死に掛けといて他人の心配する!?あぁもーっ!!なんであのバカ女神もこんなのに茜巻き込んでるわけ楽羅もあっち行ってるし信っじらんないっ!!

「にゅ?」

 

 何で怒ってんねんやろ、雪合戦、嫌いなんかな?
 巻き込んで…?

 

…あぁ、そっか。
私が弱いのに、雪合戦に参加してるから怒ってんねんね。
危ないからて、心配してくれてんねやね。
誰も弱い私の面倒を見てないから、怒ってくれてんのやね。
そっかぁ…

 

 

「…」

 

 

 おかしいなぁ、
 心配してくれんの、嬉しいはずやのに。
 なんでやろ、
 ちょっと、

 

 

 

 悔しいな

 

 

 

「…?何し」

 

 

 いきなり屈んだ私をカーラが見下ろしたとき、
 私は作った不恰好な雪玉を、カーラにえいやって投げつけた。

 

 

べし。

 

 

「…」

「…」

 

 それはカーラの胸のとこに当たって崩れて雪に戻って、
 なんとなく、二人で黙る。

 

『カーラ選手、雪玉に当たりました!!』

『ナイスだ茜!!って、おや?二人とも固まっております動かなーい!!』

 

「…」

「…っ」

 

 あ、
 怒った。

 

「っ、の、」

「あ、あははははははは?」

「さっさと退場しろこのバカ天然っ!!」

「うきゃうっ」

 

 ばすばすばす

 

 雪玉…ってゆーより、雪の塊?やろか?が三つ当たってもぉて、視界が歪む。
 あぁ、そっか。三回当たったから退場やねんな。

 

『ああっ!!茜選手無情にも三回当たって退場です!!』

『これでカーラを妨げるものは誰もいなく…え?!』

 

 視界が戻って、桜花たちの横にいつの間にか座っとって。
 けどそれよりも、
 開いた目に映ったんは、

 

 

「うわ?!」

「油断大敵、だな。」

 

 ―――――――カーラの背後から雪玉をぶつける楽羅の姿。

 

 

「わぁ…!」

 

 凄いなぁ、
 いつの間に回りこんだのやろ。
 それにあんな遠くから。

 

「茜!!」

 

 楽羅が、笑ってこっちを向いた。

 

「ほえ?」

「――よくやった!」

 

 笑って、
 見たら、月留も笑って親指突き出しとって、

 

 

 

 あぁ、
 そっか、
 気づいて、バカやなぁって自分のこと思う。

 

 

 

 楽羅も月留も、私のこと、足手まといやなんて思ってなかってんね。
 私に出来ることを、私がやっただけやってんね。

 

「茜、凄いっ!!」

 

 瑠華が嬉しそうに叫んでくれて、

 

 

 

 

「うんっ!!」

 

 私は大きく頷いた。

 

 

 

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