桜花姉ちゃんと桃華姉ちゃんの実況で、茜が退場したのとカーラが二発当てられたことを知り、俺は押さえ切れなくて小さく笑う。 雪合戦響視点 雪合戦。最後にやったのは一昨年の正月だ。二年間の冒険が終わって、ゼノルとレイスレットとツァルベルと翔と姉ちゃんたちとで、ゼノル達の世界で雪合戦をしたんだった。 雪玉を作りながら思い出して、知らず頬が緩む。負けたけど雪合戦は楽しかったし、今だってそうだ。 ルーンの方に瑠華と月留。翠はそっちの援護に行ってる。 …あれ?俺もしかして余ってる? 『おぉっと!!夜独選手、ダード選手のフェイクに引っかかり一発当たった――――っ!!』 『翠選手!背後から月留選手を狙うも避けられ逆に一発取られたっ!!』 「おーい」 ぱたぱたぱた 両手を振ってみるけど、他が白熱してるからか、実況中継中の三人も俺が余ってることに気づいてくれない。 このまま岩陰にでも隠れてたら最後まで生き残れるんじゃないかなとは思うんだけど…それじゃあ面白くないじゃん。せっかくの雪合戦なのにさ。 ルーンと翠の援護…は、月留姉ちゃん相手にすると、試合が終わった後まで絡まれるし、 俺は雪玉を両手に一つずつ持ち、回り込んで――――――同時にダードの背中に放った。 「うどわっ」 「っしゃ!」 へへん、やりぃ!ナイスコントロール俺! 「おまっ、響!!いきなり何すんねん!!」 「気づかなかった方が悪いんだよダード♪油断大敵火の用心ってね」 「意味わかっ」 ぐしゃ 振り返って文句を言うダードの後ろ後頭部に、夜独兄ちゃんの投げた雪玉がヒットした。 「忠告は聞いたほうが良いぞ?あと一発で退場になったことだしな。」 「そうそう。忠告はちゃんと聞いた方がいいよダード、次で終わりだけどな♪」 「っ、の、クソガキがッ」 爛、とその血を垂らしたみたいな瞳が燃えて銀の髪が波打つ。 「「げ;」」 模擬戦で何度か見たことがある。魔力球。 「ちょ、ダードこれ雪合戦!!」 「そうだぞ落ち着け!!攻撃するなら雪玉にしろ雪玉に!!」 「じゃかぁしいわっ!!」 ヤバイ!!本気の目だ!!! 「楽羅!!カーラ!!へるぷみー!!」 「は?」「ん?」 俺の情けない声に戦闘をやめて振り返る二人。その隙に、俺は楽羅の背後へ回りこむ。 「カーラ、頼む!!」 「オッケー♪あとで餡蜜つくってねんv」 楽羅が俺を小脇に抱えて横に跳んだ。 疑問が声に出るより早く、カーラは左右に広げた両手に風を具現化させる。 「消・え・ちゃ・えぇえええっっ!!!!」 咆哮に連動して、具現化され、集められた風が大砲みたいに打ち出され雪を抉り飛翔し―――――――瘴気の球にぶつかって、空に向かい上昇気流を巻き起こした。 「す…っげぇ…」 濃縮された瘴気が風に巻き上げられて、その途中で霧散して無力化される。 うわぁ…雲が出来てる…; もう驚くのを通り越して呆れてたら、向こうでダードがルーンにとび蹴りを食らわされてて、 「うわぁっ」 「油断大敵火の用心じゃなかったのか?」 へ? 『ああ!!騒ぎに乗じて楽羅っち、響の背中に雪玉を当てました―――――っ!!酷い!!響に何すんのよ楽羅っち!!!』 「ははは、悪い悪い。けど、そういうゲームだろ?」 同意を求めるみたいに、笑顔で言う楽羅に一瞬唖然として… 「おう!倍返しだかんな!!」 俺は笑って宣言した。 ******* |
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