茜がリタイアでダードが後一発。月留姉と俺と楽羅兄はまだ無傷。 雪合戦瑠華視点 けど、これ以上こっちの数を減らされるわけにはいかないよね。 「大体あんたは――――――っ!?」 言葉の途中で、不自然な力の流れに気づいたのか振り返る動作と同時に横に跳ぶルーン姉。 「うっひゃあ!!?」 ばすっ 咄嗟にしゃがんだルーン姉の、顔を庇った腕に途中で曲がって追いかけてきた雪玉の一つが当たる。 「ぶっ…瑠華ッ!!!おま、味方に当ててどないすんねん!!?」 「わぁ!!ごめんなさい!!」 『そこ!!小さい子を脅すな!!』 『そうですよ!大人気ないですよダードさん!』 「ちょお待てや、俺が悪者なんか?!」 「小さい子って…俺、今年で十七歳だよ!?」 酷い!!確かにまだ身長150cm無いけど!! 「瑠華!後ろ!!」 「ふえ?」 ばすんっ 『あぁ!!瑠華の背中に夜独さんの投げた雪玉が命中しました!!』 『ちょっと夜独!!今年二十歳になったんだからもうちょっと大人になんなさいよ!!何子供虐めてるわけ!?』 「貴様らは贔屓し過ぎじゃあないのか…?」 辟易したみたいな声と実況に振り返れば、雪原でくっきりとその存在を主張する、真っ黒な夜独兄が右手で雪玉を遊ばせてた。 「私がいるってこと忘れんじゃないわよ!!食らえルーンスノーボール!!」 うわぁ、そのまんまなネーミングだね! 前方には夜独兄。横にはルーン姉。でもって背後には翠兄が構えてるのを確認して体が強張る。 「く…っ」 「ちょっと月留!!何すんのよ!!」 「まぁまぁ、二人の相手は私ってことで。一つよろしく!」 人を食ったみたいな声に、見たら月留姉が翠兄に向かって雪玉を投げながら鮮やかに笑ってた。 「ダードも雪になってないで手伝ってね!」 「無視しとったんは己らやろが!!」 『おおっと!!乱戦です!!』 『瑠華がんばってー!!』 『…眠い』 『あぁ!!寝るんじゃない朱禍クン!!寝たら死ぬぞ!!』 『…煩い』 お姉さん達…実況する気あるのかなぁ…? 「それじゃあ、やるか。」 「うん!負けないよ!!」 宣言と同時に念動力で雪の塊を六つ浮かせ、くるくる回して雪玉にする。 「いっけぇ!!」 「ふん」 す…、とその瞳が眇められて、走りながら危なげも無く雪玉を避ける。 「逃がすか」 「逃げてないもん!!」 言い返しながら雪玉を一つ飛ばす。 僅かに身を屈めて隙無く走る夜独兄の姿はまるで黒豹みたいで、 「―――――直線的だな。」 夜独兄が最後の一つを避けて、一瞬動きが止まったとき、 「なっ!?」 「チェック・メイト!!!」 手袋をはめた両手に元々持っていた雪玉を、 ばすぼすっ 不安定で無防備な体勢だった夜独兄に、雪玉はあっさり当たって黒を白で覆う。 『おお!!!瑠華が夜独に二発当てました!!凄いぞ瑠華!!』 『これで三発当たった夜独さんは退場です!』 『……退場』 あからさまにやる気無いね朱禍姉; 「…まぁ、それなりには楽しめたか。」 微かに喜色の混じるその言葉を最後に、夜独兄の姿がブレて消える。 こっちに向かって満面の笑顔で親指を立てる月留姉に、俺はやっぱり満面の笑顔でVサインをした。 ****** |
予想外の出来事⇒ |