現時点で茜ちゃんと夜独がリタイア。あっちは瑠華が一発食らっててダードが瀕死(後一発)。だけど最大難関二人が無傷。
 それに対してこっちは翠と響が後二発で私とカーラは瀕死。
 全体的な能力じゃあこっちが絶対優位だと思ってたのに!!

 

 

 

 

 

雪合戦ルーン視点

 

 

 

 

 

 舌打ちしながら私は月留の雪玉を避けてダードに雪玉を投げる。
 だけど身体能力はあっちが上で簡単に避けられてムカつくっ!!

 

 

「ちょっと!!ダードの癖に何避けてんのよ!!!」

「避けるに決まっとるやろが!!!」

 

 

 むぅ、ダードの癖に生意気な。
 火炎球(ファイアーボール)でもぶち当ててやろうかと思ったけど、今の勝負は雪合戦。当てるなら雪玉じゃないとダードはリタイアにならない。
 吹雪舞(ブリザード)の呪文を唱えれば一気に二人とも倒せるんだけどあれは詠唱時間が長すぎてこんな状況じゃ使えない
 私は自分と翠に向かって投げられた六つの雪玉を氷飛礫(アイシクル)で叩き落し、 雪玉を今度は月留に投擲するけど、やっぱり避けられて舌打ちする。

 

 

『赤チーム、苦戦してますねー!』

『それに対し楽羅っち、カーラ・響君の二人を相手に余裕だ!!笑顔だ!!こら――っ!!楽羅っち!!響君ががんばってんだからさっさと当たりやがれ――っ!!

 

 よかった、まだ二人とも無事みたいね。
 こうなると、楽羅っちをカーラと響が引き付けといてくれてるのはかなり助かってるかもしれないわ。あぁ、だけど、あの二人が返り討ちにでもなったら洒落になんないし…。
 兎も角いつまでも遊んでいられない事は確か。何せ負けたらメイド服でお給仕!!!
 ああいうのは他人がやってるのを見てるのが楽しいのよ!!
 自分がひらひらのスカートとか、ぴらぴらのフリルの服着てダードとかロキとかシオンとかにお給仕だなんて……嫌過ぎる―――っ!!!
 一瞬過ぎった想像に、私はさぶいぼ全開で首を左右に振った。ううう……そんなの、そんなの屈辱だわ!!!絶対に負けらんない!!

 

 

「ダード!!」

「なんや、降参する気にでもなったんか?」

んなわけないでしょバカ。そうじゃなくて!」

 

 

 こうなったら…手段なんか選んでられないわ。
 そう判断した私は、戻ってきた瑠華が投げた雪玉を雪玉で相殺しつつ涙を呑んで叫んだ。
 ごめん、ムーン!!

 

 

誰にも邪魔されずにムーンと一日デートvができるケーキバイキングペア・チケットあげるから雪玉に当たんなさい!!」

「その話乗ったぁあ!!!」

「「はぁっ!?」」

 

 

 一も二も無く成立した商談に月留と瑠華が目を瞠る。その一瞬の隙に、私はダードへ、翠は瑠華へ雪玉を投擲!!
 ばすぱすっ…と軽い音がして、見事二人に雪玉は命中した。
 ごめんね!瑠華!こっちも負けられないのよ。

 

 

『あぁ!!ダード選手雪玉三つ目命中につき退場です!!』

『ダード、あんたはバカか!!?だけど男としては正しい判断だったのか――――っ!?』

『ってちょっと翠!!あんた瑠華に雪玉当てるなんて酷いと思わないの!?

「なっ!?こ、これはそういう競技ではなかったのか!?」

はいはいそういう競技だから!!ボケてないでこのまま一気に残る二人も倒して全員で楽羅っち潰しに行くわよ!!」

 

 

 ダードの姿がぶれて消え、我に返り、雪玉が当たったことに気が付いた瑠華が「あぁ―――っ!!」って可愛く叫ぶ。その声と私の突っ込みで翠のどっかに行きかけてた思考は戻ったらしく「了解した」という返事が返ってきた。
 それを聞いて、私はにまりと笑い両腕を胸の前で交差させる。

 

 

「そんじゃ、私が氷系の呪文で二人の動きを封じるから、詠唱してる間二人の相手お願いね!!絶対に雪玉に当たるんじゃないわよ!!

「了解した。」

 

 

 こくん、と頷く翠の背中を見てから、私は詠唱を開始する。
 それを合図に月留と瑠華が同時に動くのを雪玉で牽制する翠の姿を視界に納めると同時に私は両瞼を閉じ、その裏に舞い狂う氷と激しい風をイメージし始めた。
 二種類以上の属性が合わさった魔法ってのは、扱いが難しい上に詠唱が永いのが欠点だけど……流石の二人も、これは絶対に避けられないはず!!

 

 

 前へと突き出した両手の平に魔力が集まり、発動の言葉を唱えようと私が目を開いたとき、
 視界いっぱいに銀白色が広がった

 

 

 ―――――…へ?

 

 

「ぶっ!?」

 べしゃ

 

 

 反射的に再び両目を瞑った私は顔面を襲った衝撃に蹈鞴を踏んで―――その拍子に集めた魔力が霧散する。
 って、え、えぇ!?

 

 

『あーっと!!!ルーン選手、翠選手の避けた雪玉に当たってしまいました!!!』

『三発目です!!ルーン選手退場!!!』

「はぁ!?」

 

 

 何、どういうこと!?
 混乱する頭の中で、桜花の実況が部分的にリピートされる。

 

 

「翠選手の避けた雪玉に当たって…って、ちょっと翠!?どういうことよ!!

 

 

 睨み付ければ、当の翠はきょとんと目を瞬かせて軽く小首をかしげ、心底非難されている理由がわからないとでもいうように

 

 

「俺はお前の指示通り雪玉に当たらないよう避けただけだが。」

 

 

 言い切りやがった。
 思わず絶句して、私は言葉の出ないまま口をパクパクと開閉させる。
 だけって、だけって!!!

 

 

「む?どうしたルーン=セレス。呼吸困難か?激しい運動が原因であるなら何らかの持病であることも考えられる、早急にどこか安全な場所で安静な状態を保ち、それでも治まらないようならば専属の医師に」

原因はあんたに決まってるでしょこの超絶天然ボケ男――――っ!!!あんたが避けても私に当たってたら意味ないじゃないのよぉぉおおおっ!!!

「そうか、以後気をつけよう。

もう遅いわよッ!!!」

 

 

 今ので三発目だっつーのっ!!!
 あぁ、もう、もうっ

 

 視界がぶれると同時に、
 私は命いっぱい、力の限り絶叫した。

 

 

 

「あんたなんか二度と信用するかっ!!バッカやろ――ッッ!!!

 

 

 

 

 …後で翠に、絶対に特大の攻撃魔法ぶちかましちゃるっ!!!

 

 

 

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微笑を浮かべて⇒