喫茶『鳥籠』という≪世界≫がある。
本当にちっぽけな、例えるならば畳十畳分くらいの、≪世界≫と呼ぶにはそれはあまりにも小さな店だ。
≪世界≫に住む人間はたったの二人。それも『鳥籠』で必ずしも寝食を過ごしているとも限らない、どうやって生活してるかどうかも分からない住人だけ。
お目にかかれるのは神に創られた数十名あまり。呼び出す方法は至って簡単。ただ「行きたい」の強く思う、たったそれだけ。
創った者たちの心の傷を癒すため。そのために【神】は『鳥籠』を創り出した。
他でも無い世界の狭間。定められた場所をもたない、世界と世界の間に創られた不確定の店――
数多世界を繋ぐ唯一の場所、その場所こそが喫茶『鳥籠』。そこはあまりにも……