「由々しき事態だよ。」
革張りの椅子に座り、少年は木目の美しい事務机に両肘をつき、組んだ両手に顎を触れさせるように置いて静かに言った。
少年が座るその場所の後ろにある広い光取り窓から夕日の斜光が入り、その金髪に反射して光を散らす。
色の変わる瞳は、今は思案気な濃い藍色。
少年の言葉に、机から数歩はなれて佇んでいた青年が愁眉を顰める。
「それほどまでに、事態は悪化しているのですか?」
「あぁ。それぞれの世界の支配者達にも、手に負えなくなりつつある。」
いつものように飾ること無いその言葉は事態の深刻さを表しているようで、青年はそれを嘆くように目を伏せた。
「いずれ気づいてくれるだろうと思っていたのだけれど、こうなっては仕方が無い。」
少年は立ち上がると、言った。
「事態を、女神に報告しよう。」
そうそれが
この秘匿されるべき物語の始まりだった。