真水ではない水でその姿を形成している『
それを跳躍して回避し、ルーンは舌打ちする。
「あ〜も〜何こいつ鬱陶しいって言うか乙女に攻撃してくるってどういう了見よ乙女の前に立ちふさがる邪魔者は乙女にあっさりやられないといけないって法律あんのよ知らないわけ?!」
「そーだそーだー!!」
もちろん、言うまでも無いがそのような法律は存在しない。しかしルーンの支離滅裂な怒鳴り声にも月留は拳を振って同意した。二人とも、それを言う瞳が遊び半分
「ってか確かアレでしょ?『
「そーそー、けど水が邪魔して攻撃が届かないんだよねぇ」
「だからって炎系の魔法って私派手なのしか覚えて無いし………さすがに屋内で使うのはちょっとねぇ」
「風系とか覚えて無いんっすか?こぅびゅばっと斬っちゃうとか」
「え〜風って見えないから地味でしょ〜?私派手なのしか興味なかったから風系は基礎だけしか習得しなかったのよー」
などと会話しているその背後では桜花が逃げようとしている強盗団の面々を端から着々と魔力を込めて数倍にも威力を増した手刀で昏倒させていっているのだが二人は完全無視である。
何故なら、彼女達は各々の役割を言われるまでも無く理解しているからだ。
『
ならば強盗団の方は桜花にまかせて自分達は『
――――――まぁ、二人の場合『
と、月留とルーンは『
「もち。」
「当然v」
「これだけ被害大きくしといて無事も何もないじゃないですか……」
僅かに緊張で強張った問いかけに、二人はVサインを寄こしその背後で桜花が溜息を吐く。どうやら無傷らしいと軽く安堵の息を吐いたその人影―――――楽羅は『
「――――で、コイツは俺が倒した方がいいのか?それとも」
「当然、私達が倒すに決まってんじゃないのよもー楽羅っちってば乙女の獲物とったら死刑だって知らないの〜?」
「そーよ楽羅っち、猫耳の刑よ?」
「「ってなわけだからさっさと武器ちょーだい」」
テンポ良く答える二人に楽羅は「ははは…」と乾いた笑みを浮かべると、それじゃあと背負っていた黒い布の包みを床に滑らせた。ちなみに本名を思いっきり暴露されているが本人は気づいていない。
包みはそのまま『
ルーンの魔法石を埋め込み切れ味を増してあるショート・ソードに月留愛用のトンファー、それに何やら黒くて丸い物体が数個転がり出る。ちなみにそれらは技術開発に属している月留の弟・柳沢
「そんじゃ、一番、【
なにやら宴会芸のノリで片手を挙げ宣言すると手際よく鼻歌混じりに手榴弾の安全装置を解除し輪の形のレバーに犬歯を引っ掛けると口でそれを引っこ抜き
「そぉぅれぇえvv」
「――――唸れ、『
『
この魔法は、殴られたかのような強い衝撃を与えるだけの風系の精霊魔法中でも基礎中の基礎に位置する魔法である。だがしかし、衝撃を与えられた手榴弾は一瞬強烈な閃光を放ち、次の瞬間天井を揺るがすほどの振動を起こして破裂した。
続いて突然高温に触れた水が水蒸気爆発を起こし、辺りを霧が覆う。
「っはぁ!!」
視界を覆い隠す白の中、駆けたルーンが落下する玉の影にショート・ソードを一閃する。
果たして容易くそれは二つに斬られ、霧が晴れる頃には砂のように崩れて最早跡形も残ってはいなかった。
「――――お掃除完了……ってね♪」
にん、と笑んで呟いたルーンの視線の先では、
楽羅と桜花が強盗団全員を捕らえ終えていた。